世界に優秀な人材を供給していることで知られる「人材大国」インド。その中でも、これからの製造業を担う若手エリートビジネスマン30人が、“モノづくり”を学ぶために訪日した。経済の低迷が続き、閉塞(へいそく)感が漂う日本。彼らが分析する「ニッポン」の強みと弱点は、これからの日本が進むべき道を示してくれているようにも映る。(豊吉広英)
■スーパーエリート集団
「ハイ、ワラッテ!」
今月7日、東京?両国駅そばの江戸東京博物館。覚えたての日本語で来場者に写真撮影を頼んでいるのは、国際協力機構(JICA)が支援する「インド製造業経営幹部育成支援プログラム」(VLFM)の若手管理者育成コースで学び、その一環で来日した30歳前後のビジネスエリートたちだ。
いずれもインドの一流大学を卒業し、有名企業で数年間働いた後、さらに高度な能力と資格を得るため、職を辞してVLFMに参加。約1年間にわたりインドトップクラスの3大学で日本の製造業の経営手法などを学んできた。来日はプログラムの卒業研修旅行と位置づけられ、大手企業の工場見学や、興味のある分野の自主研究などの日程が組み込まれた。
この日の課題は「ディス?イズ?ジャパン」と「日本人の笑顔」というテーマで写真を撮ることだ。
元気なお年寄りをカメラに収めたアンシュマン?スリバットサバさん(31)は「戦争を経験した後、製造業を中心にここまで経済発展した日本はフェニックス(不死鳥)。その日本を作り上げ、今も元気なお年寄りもまた不死鳥のような存在」と話した。
■モノづくりのDNA
IT(情報技術)産業や金融などでは世界の先端を行くインド。だが製造業はその後塵(こうじん)を拝してる。国の産業基盤である製造業を担い、祖国の発展に尽くそうとする彼らの視線は「モノづくりの国」に向かう。
「JICA研修所の部屋やトイレの使い方を説明する絵や説明文が分かりやすくて機能的だ」。参加者唯一の女性、ナガ?ガヤトゥリさん(29)はそう語った。「日産の工場に行ったとき、見送りで見えなくなるまで手を振ってくれた。こうした細やかな心遣いがモノづくりにつながるのでは。インド人には数学が得意なDNAがあり、日本人にはモノづくりのDNAがあるようだ」とも。
VLFMのチーフアドバイザー、司馬正次筑波大名誉教授は「彼らが指摘するのは日本の『規律の順守』『高い道徳心』『顧客第一の姿勢』などいずれも製造業の基本となる考え方」と指摘。「モノづくりの文化の背景には、こうした精神が潜在的にあると考えたのではないか」と推測する。
■盆栽に見る日本の弱点
日本を象徴する文化に、「日本の製造業の弱点が重なる」という声もあった。
「盆栽で印象的なのは大きな実も大きな葉もできないところ」と語るのは自主研究で盆栽と製造業のさまざまな過程を比較したニティン?ガルグさん(33)だ。小さい鉢で日々成長する草木を観察し、植え替えや剪定(せんてい)、整形など長い年月をかけ改良を続けていく過程などを専門家から聞いたガルグさんは「日本の製造業で用いられる『カイゼン』に似ている」と感じたという。そのうえでこう指摘した。
「過去の過程に重点を置きすぎ、新しい物事に踏み出せないときがある日本の製造業に通じる弱点もあるのではないか」
司馬教授は「歴史や過去の過程を大事にするなど、日本とインドは共通点が多い。彼らの指摘で気づかされることも多い。こうした考察は日印関係にも好影響をもたらす」と話している。
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引用元:RMT(リアルマネートレード)専門サイト『RMTワンファースト』
2011年2月10日木曜日
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