一般ユーザーの投票で選出される「インサイドゲームアワード」。2009年度の「ベストモバイルゲームメーカー」部門に輝いたのはカプコンでした。編集部ではトロフィーの授与を行うと共に、モバイルゲーム部門を統括する手塚武氏に、ゲーム開発の思いなどを伺いました。
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左カプコン手塚氏、左インサイド編集長 土本
―――このたびは受賞おめでとうございます。率直な感想を伺って良いですか?
手塚:非常に光栄なお話で、ありがとうございました。
―――モバイルゲーム関連での受賞は初めてと伺っています。
手塚:そうです。もともとiモードのスタートと同時期にモバイルゲーム開発もスタートしたのですが、幸いにも弊社には強いブランドタイトルがあるので、まずはブランドタイトルをモバイルに展開するところから始めました。そのためモバイルゲーム専業メーカーと比べると、単に有名なゲームをケータイ向けに移植しているだけに見えたみたいで、モバイルゲームアワードなどの受賞は今回が初めてなんです。GPSや通信機能などケータイならではの機能を使われているものが対象となりがちだったように思います。
―――なるほど。
地味な努力が実った手塚:もっとも内部では、ケータイゲームユーザーは従来のコンソールゲーマーとはタイプが異なるはずで、その人向けにどういうゲームを提供するべきかを第一に、チューニングやカスタマイズをやってきました。そういう意味で、お客様からモバイルゲームメーカーとして選んでいただいたのは、非常に光栄であると共に、これまでの地味な努力が実ったのかな、と喜んでいます。
―――フリーワード欄などを見ると、iPhone向けに初期から良作ゲームを発売されていたのが高評価につながったようです。
手塚:当初はiPhoneユーザー層と、求められる作り込みの度合いが見えにくい点がありました。ゲームは作ろうと思えば、どこまででも作り込めますが、コストを回収できなければビジネスとして継続できないので、その見極めが難しかったですね。特にケータイアプリやコンソールゲームを、そのままiPhoneに移植するだけなら、比較的コストが抑えられるのですが、それだけではお客様に納得してもらうのは難しいだろうなという印象がありました。そのためiPhoneゲームのあり方について、部内でも相当議論を重ねました。
バイオハザード4魔界村騎士列伝 ストリートファイター4
―――iPhoneユーザーをどのように捉えていますか?
手塚:30代後半の男性でIT好き、ガジェット好きなユーザーが多い印象がありますね。僕自身もiPhoneユーザーなので属性としては近いと感じています。学生時代は凄くゲーム好きで、ホントは今でもガッチリとゲームを遊びたいんだけど、なかなか時間が取れない人って意外と多いと思うんです。いつの間にか最新ゲーム事情にも疎くなっちゃった人って、僕の友達でも多いんです。そんな人たちでも、どんなゲームだったら遊んでもらえるか考えました。
―――ケータイユーザーとは違いますか?
手塚:ゲームが第1の趣味ではなくて、生活の隙間時間に手軽に遊びたいという基本的な属性は似ていますね。ただケータイアプリだと、一般のお客様、特にゲーム好きな方ほど、ロースペックという先入観をもたれている方が多いと思うんです。ところがiPhoneでは、かなり性能が高いんじゃないかという共通認識があります。iPhoneでもDSやPSPレベルのゲームが遊べるんじゃないかという。なのでケータイアプリはゲームファンよりカジュアルな人が多くて、iPhoneだとゲームファンも結構多いなという感じですね。
―――ゲームの作り方も変わっていきますね。
手塚:典型的なのが「バイオハザード4」で、iPhone版ではミッションクリア型になっています。モバイル向けでは、ユーザーに遊び方の選択肢を与えることが重要です。他のタイトルもすべて、そうした考え方で設計しています。
―――カプコンブランドを基盤に、デバイスにあわせたゲーム作りをしていく?
手塚:正確には「デバイスを使うユーザーにあわせたゲーム作り」です。WiiやDSなど、これまでにもデバイスの機能を生かしたゲームデザインはありましたが、ケータイはゲーム機ではないので、ハード属性ではなくユーザー属性にまで戻って考える必要がありますね。たとえばiPhoneでは、けっこう特殊な操作ができますが、それを全部使った物にしようとは思いません。アクセントとして使うなら良いんですが、もっと手軽に遊びたいという人も多いので、バランスを見ながら作っています。
―――iPhoneでは女性ユーザーも増えていますね。
手塚:6月売りの雑誌「anan」もiPhone特集でしたよね。大阪ではまだまだですが、東京に出張で来ると、iPhoneを触っている女性をよく見かけるようになりました。周りの女の子に聞いても、こんなアプリで遊んでいるとか、意外な話が聞けたり。確実にユーザー層の広がりは感じています。そこをいかに取っていけるかが、重要な課題になりつつあります。弊社でも先日第一弾として『ハローキティのパラシュートパラダイス』(仮)を発表しましたが、今後も新しいユーザー層の広がりを意識したタイトル構成は考えていきたいですね。
―――ユーザーの男女比はいかがですか?
手塚:あまり具体的な話はできないんですが、もともとケータイゲーマーはコンソールゲームに比べて女性比率が高いですね。うちのサイトではカプコンファンの方が多いので、男女比も半々とはいいませんが、それに近しいのは事実です。カプコンファンの方、または以前カプコンファンだった方に、自社IPのゲームを提供していくのはもちろんですが、純粋にケータイユーザーがどんなゲームを遊びたいかを考えつつ、ラインアップを広げていきます。
―――iPhoneでもオリジナルタイトルは予定されていますか?
手塚:そうですね。ただデジタル配信では広告や宣伝が難しいんです。たとえば書籍なら、ベストセラーは書店で平積みされているので、誰の目にもとまります。しかしデジタル配信だとそうはいきません。広告費用もアプリの単価が安いこともあって、なかなか潤沢にとれないんです。iPhoneでは『カプコンニュース』という宣伝アプリを配信していますが、さらなる活性化に向けて、新しい仕掛けも考えています。また映画や音楽業界にあるような、セカンドレーベル、セカンドブランドなども、どこかのタイミングで実施する必要を感じています。
カプコンニュース
―――ソーシャルゲームもスタートしました。
手塚:先日「モバゲータウン」向けに『モンハン日記 モバイルアイルー村』の発表を行いまして、事前登録を開始しました。ブームだから、儲かるからではなくて、ソーシャルゲーマーとコンソールゲーマーの両方に対する導線という意味で、非常に重要だと思っています。ソーシャルゲーマーにはカプコンのゲームを知ってもらって、コンソールゲームをプレイするきっかけにしたいですし、コンソールゲーマーには逆にソーシャルゲームの面白さを知ってもらう窓口になればと。
―――ソーシャルゲームではオリジナルタイトルが多いので、逆に目立ちますね。
手塚:そうですね。ただ、カプコンだったら『バイオハザード』や『モンスターハンター』じゃないの、という声もあると思います。でも、それって今のソーシャルゲーム市場とマッチするかといえば、そうでもないと思うんです。「アイルー村」の見た目も含めたわかりやすさ。そして「モンハン」プレイヤーにとっては、ソーシャルゲームの入り口としての入りやすさ。ブランド力だけに頼るのではなくて、その両方を満たす題材って何だろう、というところから考えて作っています。お客様にもガッチリと遊びたいとき、ゆるく友達とつながりたいとき、空き時間にちょっと遊びたいときと、シチュエーションで遊び分けてもらったらいいかなと思います。
モンハン日記 モバイルアイルー村
―――Android携帯をはじめ、プラットフォームはますます拡大していきます。
プラットフォームは広がる手塚:ゲーム業界はこれまで参入障壁が非常に高かったですよね。ところがiPhoneやAndroidのような「ゲームもできる」プラットフォームがどんどん出来てきました。そういうユーザーは専用ゲーム機のユーザーとは異なりますから、どういうゲームを提供していくべきか、常に考えています。最近ではネットにつなげてアプリケーションが動かせる「スマートテレビ」なども出てきていますよね。弊社でもサムソン製のスマートテレビに赤外線リモコンで遊べるパズルゲームなどを提供しています。
―――画面があればゲームが遊べる時代になってきた、ということですね。
手塚:あらゆるシチュエーションであらゆるゲームを提供していくのがミッションです。カプコンらしからぬゲームも、どんどん提供していきたいですね。これはカプコンの良いところだと思うんですが、わりと野放しで自由に作らせてもらっているところがあって。そんな中から新しいゲームも生まれてくるんじゃないかと思います。実は『ストリートファイター2』も『バイオハザード』も『モンスターハンター』も発売されるまではこんなにヒットすると期待されていなかったんですよ。ところが発売されると大ヒットして、新しい時代を牽引するタイトルになっていきました。我々もそうなれるように頑張りたいですね。
―――では、最後に今後の抱負など。
手塚:僕らはゲームの歴史と共に歩んできた世代なんですが、現役ゲーマーの方にはPS2からゲームに触れた方も多いと思います。そのため「これがゲームだ」という固定概念が、作り手側にも遊び手側にもできてしまっているように感じます。でも原初の頃って、すごく変わったゲームがたくさんありましたよね。iPhoneなどでゲーム開発の参入障壁が下がってオリジナリティの高いゲームがどんどん生まれはじめました。今、「ゲーム」というものが大きく変わる時期なんだと思います。たとえばゲーム業界では、ソーシャルゲームはゲームなのかと疑問を呈する人がいたりもするんですが、それはゲームのとらえ方が狭すぎると思うんです。輪投げでも射的でも双六でもゲームですから、ソーシャルゲームも立派なゲームです。作り手側も受け手側も、そうした狭い垣根を外して楽しめるようになればいいと思いますし、それを広げるための努力をしていきたいですね。
―――ありがとうございました
受賞おめでとうございました
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引用元:精霊物語グランドファンタジア(Grand Fantasia) 専門サイト
2010年11月3日水曜日
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